外国人技術者を即戦力として雇用するための5つの実践ステップ

【中小製造業向け】

人手不足が深刻化するなか、地方の中小製造業にとって外国人技術者の雇用は避けて通れない選択肢となりつつあります。特に工場現場では、専門スキルを持つ外国人の即戦力化が事業の持続に直結します。しかし「採用して終わり」ではなく、受け入れ体制、教育、定着支援まで一貫した仕組みづくりが不可欠です。この記事では日本ミャンマー支援機構アドバイザーの深山沙衣子が、外国人正社員技術者をスムーズに雇用し、工場の戦力として活躍してもらうための5つのステップを解説します。


ステップ1:外国人技術者の雇用メリットと前提条件を理解する

在留資格の種類 正社員

アルバイト・

インターン

特定技能 技能実習
特定技能1号・2号

×

× ×
技能実習1号・2号・3号 × × ×

永住者 × ×
定住者 × ×
高度専門職1号・2号 × ×
技術・人文知識・国際業務 × ×
留学生 × × ×

日本人の配偶者を持つ

× ×
永住者の配偶者を持つ × ×

表1:雇用形態と在留資格のマトリックス

 

外国人にできるだけ長く働いてもらいたいと思うならば、就労ビザ(正社員)、技能実習生、特定技能外国人の3つの資格を検討してください。内定通知を出した後、日本で就労制限のない在留資格がある人以外は、在留資格を取得したのちに入社となります。

 

少子高齢化が進む日本において、日本人にこだわらずに採用を検討することで、より優秀で若い技術者を確保でき、新たなビジネスチャンスが生まれるメリットがあります。

 

特定技能外国人…日本の労働力不足を解消することが目的。一定の技能および日本語能力の基準を満たした外国人のみが取得できる資格。農業・漁業を除き正社員・フルタイムでの直接雇用、在留期限は基本は1年で通算5年が上限。

 

技能実習生…外国人が日本企業の持つ技能や知識を習得し、母国へ持ち帰ってもらうことが目的。受け入れができる職種や、技能実習生に必ず行わせる作業などが細かく決められている。(詳しくは、「外国人技能実習機構」のWebサイトへ

2024年6月14日に廃止が決定し、2027年までに「育成就労制度」に移行予定で、2030年頃には完全に廃止される見込みです。

 

正社員…日本人を雇用するときと同じように、企業が採用活動を行い、直接的に雇用すること。すでに日本に住んでいる外国人や、海外にいる人材を見つけ出して採用する。

 

●高度専門職1号・2号…高度で専門的な能力を持つ外国人の方が取得できるビザ。1号の在留資格は5年。2号は、1号の在留資格を持ち1年を経過すること、または「特定活動」の資格を持ち一定期間在留することが要件となる。学歴・職歴・年収など項目別にポイントを付け、一定点数以上に達した人に許可され、在留期間は無制限。

 

●技術・人文知識・国際業務(技人国:ぎじんこく)…企業や組織等と契約し、機械工学等の技術者、通訳者、デザイナー、語学教師、マーケティング業務従事者など、専門的・技術的素養を必要とする外国人が取得できるビザ。

 

ステップ2:信頼できる採用ルートを確保し、業務要件を明確に伝える

①人柄

1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)

②日本語能力 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)
③学歴 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)
④肉体能力 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)
⑤社内コミュニケーション能力 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)
⑥頭脳明晰 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)
⑦ハングリー精神 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(10段階中評価)

表2:70点の人を探す評価項目シートの例

 

どの雇用形態を選ぶかで、採用までの流れも変わります。共通しているのは、外国人材紹介会社や送り出し機関が

 

「受け入れ企業や外国人材のことを、しっかりと考えてくれるか」

「きちんと活動しているか」

「外国人材の生活指導まで協力してくれるか」

「受け入れ企業に合った提案をしてくれるか」

「決まりを正しく守っているか」

 

がチェックポイントになります。

 

また、人材紹介会社に任せきりにせず、自社の工場で求めるスキルや人物像を、具体的にイメージすることが重要です。面接は基本的には、対面またはオンラインとなります。少しでも長く働いてほしいなら、「70点」の人材を狙うのがおすすめです。自社にとってどのような人物が「70点」であるのか、評価項目を設定しておくことが望ましいです(参考:表2)。

 

たとえば、工場でのライン作業の場合、計算能力やバイタリティよりも、特定の業務遂行能力や集中力、真面目さなどの部分が重要視されるはずです。自社に合うか合わないかで、採用を決めるべきです。

 

面接では、仕事内容や職場環境、雇用条件、住まいの情報なども、しっかりと短い言葉で説明することで、採用後のトラブルを防ぐことにもつながります。職場や業務で使用する器具などの動画や写真を見せると、より伝わりやすいです。

ステップ3:入社初期の教育体制と工場現場でのOJTを整備

外国人技術者の入社に向けて、安全教育や企業理念、社内ルールなどを盛り込んだ、体系的な初期研修プログラムを整備しましょう。

安全教育については、厚生労働省HPの外国人労働者の安全衛生管理のページに、図解付きの多言語の手引きが掲載されています。画像のような技能講習補助教材をまとめたページもあります。自社に該当するものを探し、参考にしてみてください。

 

マニュアルは、なるべく簡単な日本語の短い文章で、漢字にはフリガナをつけて制作しましょう。日本語の隣に母国語を書いたり、イラストや写真を入れたりすると、より伝わりやすくなります。

 

OJTは「指導担当者(メンター)」を任命し、マンツーマンで教える体制が理想的です。メンターは、実際の手本を示しながら、「はさみの法則…はっきり さいごまで みじかく言う」を意識して指導してみてください。相手がどこまで理解しているのか、途中できちんと確認することも大切です。

 

メンターだけの負担が大きくならないよう、生活面のサポートは人事がするなど、指導の役割分担をすることも必要です。このように、外国人技術者の受け入れ教育をきちんと行ったことで、その後の活躍につながった事例もあります。

 

研修資料などのミャンマー語の翻訳は、当社が承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

(画像:ガス溶接技能講習補助テキスト ミャンマー語 厚生労働省HPより)

 

ステップ4:日本語力と日本での生活力を育てる環境づくり

外国人雇用が失敗する原因のひとつに、言葉の壁があります。外国人は日本に来るにあたって日本語を勉強してきますが、ちょっとしたニュアンスの捉え方は文化によってだいぶ異なり、行間を推し測ったり空気を読むということは、ほとんど成立しないと考えた方がいいでしょう。

 

そこで、社内でよく使う日本語研修を実施し、外国人技術者の日本語力を高めて、離職が減少した例があります。日常会話の語学力はもちろんですが、仕事を円滑に進めるためには、自社の仕事にまつわる専門用語の習得が不可欠です。現場で使う専門用語を、日本語学校で学ぶ機会はまずありません。仕事の現場で起こる出来事をシュミレーションし、普段自分たちが使っている単語や言い回しを外国人向けに研修し、意思疎通がしやすくなった、と聞きました。

 

また、外国人技術者が日本で孤立しないために、住居や病院、銀行などの生活面のサポートも必要です。地域の国際交流イベントや同じ国の出身者のコミュニティを紹介するなど、外国人が日本に馴染みやすくなるように、会社側もできるだけ手助けしましょう。その労力は、外国人技術者が長く働いてくれ、会社の雇用が安定することで報われるはずです。社長がミャンマー人である当社では、できる限りのアドバイスやサポートをさせていただいております。

ステップ5:成果を引き出す評価制度とキャリアパスを設計する

まとめ

外国人技術者の雇用は、単なる労働力の補填にとどまらず、製造業の未来を切り開く戦略的な選択です。採用から教育、定着、評価まで一貫した体制を整えることで、正社員としての力を十分に引き出し、工場の生産性向上につなげることができます。中小製造業だからこそできる柔軟で人間的な雇用スタイルが、グローバル人材の活躍の場を広げる鍵となります。


外国人正社員採用について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください!本書では外国人雇用のノウハウや、貴重な戦力として長く働き続けてもらうためのポイントをわかりやすく解説します。

 

著者:深山沙衣子

 

1979年、東京都生まれ、神奈川で育つ。立教大学文学部心理学科卒業。マレーシアの専門商社や広告代理店、出版社勤務。その後、フリーライターとなる。2012年、日本ミャンマー支援機構合同会社をミャンマー人の夫と共に創設。外国人の人材約150人に対し、日本で円滑に働けるよう職業紹介や留学支援を実施した。2017年、特定非営利活動法人リンクトゥミャンマーを設立し、理事長に就任。ミャンマー人の日本での生活支援、文化交流、国際協力を行い、日本で日本人と外国人の円滑な共存を目指す活動を続けている。

 

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日本ミャンマー支援機構株式会社

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