ラジオ深夜便 インタビュー「もっとミャンマーに関心を! 深山沙衣子」

2月1日(水) NHKラジオ第一「ラジオ深夜便」に日本ミャンマー支援機構の深山沙衣子が出演しました。

ミャンマーに関心を持ったきっかけやNPO法人の活動の狙い、成果などについて語りました。

話者プロフィール
深山沙衣子
1979年東京都生まれ。神奈川県で育つ。立教大学文学部心理学科卒業。
特定非営利活動法人(NPO)リンク トゥ ミャンマー理事長。

ミャンマーに関心を持ったきっかけ

―― ミャンマーは現在軍事政権下にありますが、深山さん達は中立姿勢を掲げながら

クーデター以前からの人的な繋がりを大切に、経済支援を続けています。

そんな深山さんがミャンマーに関心を持ったのはいつ頃、どんなきっかけがあったんですか?

 

今から13~4年前ぐらいです。

当時雑誌の記者をしていたんですが、日本に住んでる外国人の方がどのように公共サービスを受けているのかを

国籍別に調べる企画が雑誌であり、色んな国の方とお話させて頂く中でミャンマーに興味を持ちました。

 

―― 色んな国がある中で、なぜミャンマーに?

 

その当時は、いえ、今もですけど、ミャンマーの方って凄く真摯で真面目な人柄の方が多いのが非常に印象深かったんです。

それから、旅行であってもミャンマーだけ行ったことがないという方がすごく多かったので、何で行けないんだろう?

と興味を持ちました。

 

―― 確かに近くのタイなどは大勢の人が世界中からやって来るし、日本人も行ってますからね。

ミャンマー人の性格と仏教

―― ミャンマーの方の性格についてお聞きします。確かミャンマーは仏教徒が多い国ですよね。

どのくらいの割合でどんな感じなんですか?

 

性格は人によりますが、非常に控えめでも、芯の強さがある。日本で言うとそういう感じになりますかね。

仏教徒は九割ぐらいといわれてますが、人口統計が正確に取れるかというとそうでもない国なので……

ただ日々付き合っている方と接していると、一割ぐらいクリスチャンだったり別の宗教の方なので、

まあ(仏教徒が)八~九割で間違っていないんじゃないかなあと思います。

 

―― 人々は仏教を大事になさっているんですね。寺院とかはたくさんあるんですか?

 

寺院はたくさんありますね。仏教的な信心っていう意味では、親やお坊さん、先生、目上の方を大事にしなさい

というような教えは非常に浸透していると思います。

結婚を機に……

―― そんな中で、深山さんはミャンマー人の夫と結婚なさった。

これはいつ頃、どんなきっかけで知り合ったんですか?

 

取材をきっかけで知り合いました。夫は色んなメディアにミャンマーの状況を伝えるような仕事をやっていました。

 

―― ご主人は日本にいつ頃、どのように来られたんですか?

難民申請とかなさってたんですか?

 

難民申請はしていて、当時は難民認定も下りてましたね。

日本に来たのは一九九〇年でした。

 

―― でもなかなか日本って難民申請をしても下りない事が多いですが、ご主人の場合は……

 

そうですね。なかなか通らないし、難民申請しても審査に長く時間がかかったり、

申請したら一回警察がお家に来て入管に入ってもらうという慣例が昔はあったので、

なかなか皆さん申請するまで行きつかなかったんですけど。

二〇〇七年ぐらいに難民申請の基準が緩和され、そこでミャンマーから来た方が一斉に難民申請をしだした。

以来、その中で長く色んな活動をされている方にどんどんビザが下りてくる、

難民に認定された方々が増えていったと思います。

 

―― その中の一人がご主人ということですね。

やがて結婚されたというのは、どんな所に惹かれたんですか?

 

専業主婦になるというのはどうしても考えられなかったし、かといって、日本人の方と結婚して、

仕事を一緒に両立していくと言っても多分自分の考えだとそれは合わないんだろうなあ……とずっと感じてたので、

自分が生きやすいようなことを認めてくれる方がたまたまミャンマーの方だった。

という所ですかね。

 

―― では結婚なさってもお仕事は続けると。

 

そうですね。そこまであまり考えてなかったですけど、

結婚して子供が生まれるあたりで、夫が起業をしようと言い出したんです。

 

―― 仕事を新たに興したということですね。

ミャンマー支援機構株式会社 設立

当時は私はライターとしてフリーの活動を、夫は日本の中古車をミャンマーに輸出していて、

会社組織を作って下さいと言ってきたんですよ。

個人で行っていた輸出業を法人化してもいいんじゃないかと、そんな感じでしたね。

最初は法人だけ作って、私の個人的な仕事と、夫の輸出業を手伝っていました。

 

―― やがてそれが株式会社として、ミャンマー支援機構を設立されたと。

これはどういう狙いだったんですか?

 

ミャンマー支援機構が現在の法人化した会社なんですが、外国人、

特に東南アジアの方が日本で起業してどこまでやれるのかなあとか、

日本社会に受け入れられるのかなあとか、ちょっと試してみたいというので(起業を)やってみました。

 

―― 中古車という話はありましたが、その他には具体的にはどんな物の輸出を?

 

最初は中古車を輸出していて、そのうちに日本の中古車を売っている会社さんから

ミャンマーのバイヤーを紹介してほしいって話がでてきたので、

日本人とミャンマー人の業者さんを繋ぐような商談会をミャンマーで開催したんです。

その時に日本の中古車業界新聞に広告を打ったら結構反響があって、

そのうちの一社がミャンマー人の人材を紹介して下さいって言ったんです。

それでその会社の近くに住んでいるミャンマーの方を紹介したんです。

 

―― そういう人達をサポートするのが(現在の)深山さん達の仕事という事ですね。

 

そうですね。夫は会社を作る前はボランティアベースで何百人も仕事を紹介してたんですよ。

それを見た私のライター仲間で人材派遣会社をやっている人が、紹介業を有料で初めてみてはどうかと言ってきたんです。

それが今の事業の骨格のきっかけです。

 

―― でも、ご主人にしても、自分で起業しなきゃならないというのはなかなか雇ってくれる日本の会社があんまりなかったという裏返しでもあるんですか?

 

そうですね。結婚してわかりましたけど、やっぱり外国人のコミュニティの中には常に仕事を探している状態の方が一定数いますし、

仕事がないわけじゃないけど今の仕事より良い待遇の所に行きたいですとか、

ある程度仕事を覚えたからもっとステップアップしたいですとかそういう願いの方は非常に多かったです。

 

―― ミャンマーの方は仕事を探している、企業はある程度日本語や日本社会のことがわかるミャンマーの方が要る。

ボランティアをビジネスにしたのは、その方がミャンマー人の方と企業の方お互いにとって仕事がスムーズに運ぶ

というような事があるんでしょうか。

 

企業の方が外国人を募集する場合、独自で探してうまくいくというケースもあるんですけど、

やっぱり履歴書だけでは見えないその方の背景だとか、仕事を探している理由や状況だとか、

そういうのは中間にいる私達がお伝えした方が定着しやすいとは思うんです。

例えば、ご家族がどのエリアに住んでいて、こういう事情で日本に来ているからあと何年は滞在したいです……とか。

そういう事を伝えると、企業の方が安心されるというのはあると思います。

NPO法人リンクトゥミャンマーについて

―― その後に今度はNPOのリンクトゥミャンマー……ミャンマーと繋がるという意味でしょうか……

を設立されましたが、これは株式会社の方とは役割が異なるわけですね?

 

はい、そうです。株式会社はミャンマーに関わる事であったらビジネスベースに上がる事は何でもやるようなスタンスなんですが、

それに伴ってたとえば人材紹介をした時に配偶者を呼びたいとか、

お子さんをどうやって日本社会に馴染ませていこうかとか、

救急搬送された時咄嗟の事で何をされるかわからないとか、

色んなニーズの相談がずーっとあって、

これが数百件越えた時、もう法人化して誰か助けてくれる方とやった方がいいかなと、NPOを作りました。

 

―― NPOの中では活動の3本柱というのがあるそうですが、

まず一つが今話に出ていた定住支援でしょうか。

 

はい。あとは文化交流と、国際協力をやるという事で、掲げています。

 

―― 文化交流とは具体的にどんな事をやっていらっしゃったんですか?

 

日本にいる場合は、日本で国際交流フェスタみたいなのが各地で行われるとブース出店して、

ミャンマーでの活動や民芸品を紹介したりしています。

後はミャンマーの方のお宅を訪問して、日本に住んでいる外国の方がどういう気持ちで、

どういう生活様式で暮らしているのかというのを日本人に見ていただいて、

身近にいる外国の方がどういう事を考えているのかな、みたいなのをシェアする機会を作るですとか、

そういう事をやっています。

 

―― 日本にいらっしゃるミャンマー人の方のサポートをするだけでなくて、

日本人の方にもミャンマー人の事を知って理解してもらうということですね。

もう一つ、経済協力というのはどういった活動なんですか?

 

うちのNPOでミャンマーのコーヒーや、縫製工場で作ったマスクを売ったりしているんですが、

ミャンマーの方の雇用継続に繋がるような商品を少しでも日本の方に買っていただく事で

現地の方に還元できればという所ですかね。

 

―― よくフェアトレードという言葉を聞きますけど、それに近いような?

 

近いとは思います。

 

―― でも僕はあの、ミャンマーがコーヒーの産地というのは知らなかったです。

結構有名なんですか?

 

いやー……どうなんですかね……日本の方ってやっぱり、ブラジルとかエチオピアとかそちらの方が?

ただ私ミャンマーコーヒーを売るに当たって少し調べたんですけど、

コーヒー業界の中ではタイとかラオスのコーヒーは結構有名なんですよね。

そういう業界の方の中では知られていて、ブランド化していないけれど実は日本人もよく飲んでいるみたいです。

 

―― 知らないうちに親しんでいたんですね。

ミャンマーの現状について

―― 実際色んな活動をされる上で、何か障害になるような事はありますか?

 

まず欧米の経済制裁です。

東南アジアの諸国って欧米とか日本とか、先進国のお金で国を回していたというのが非常に大きいので、

経済の停滞というのは非常に著しくあると思います。

 

―― かなり、ミャンマーの一般大衆の生活というのも苦しくなっていると?

 

はい。苦しくなっていると思います。

 

―― 深山さんご自身はミャンマーの方にもう何度も行ってらっしゃるんですか?

 

はい、何回も行ってますね。昔は一年に一回ぐらいは夫の実家のところで過ごしたり、

あとかなり色んな州を周ってみて、どういう所で日本と繋がれるのかとか。

実際、他の日本の企業さんからこの州でプロジェクトやりたいから探ってきてと言われて

お仕事で行った事もありました。

平等への想い

―― やっぱり深山さんご自身としても、何らかの形でミャンマーの方々の役に立ちたいという想いがあるんでしょうか。

 

そうですね。ミャンマーに限らずですが、やっぱりこの地球上で日本に生まれるというのが凄く幸運なことで。

日本に生まれず発展途上国に生まれた方にとって、

何らかの夢を持てるとか、発展途上国の環境をステップアップできる、みたいなチャンスをどんどん提供できる。

それによって先進国の人も豊かになれるようなモデルが作れればいいなとは思います。

発展途上国を支えるためのODAって重いですし、

人はどんな方でもいい思いをして生き亡くなっていくというのがいいと思うので、

もう一生この環境で変わらないと思うような方々が減るほうがいいですよね。

日本がこれからどうやって豊かさを保って生きていくのかなというのを考えた時に、

現時点では日本人がやりたくない仕事を外国の方がいっぱいやって下さっているという状況が既にあって。

だからその外国人の方の活力とか強さとか、そういった所を上手く取り入れて一緒に生きる道ってのを考えていった方がいいんじゃないかなとは思います。

けれども一方で、移民政策が上手くいっている国というのもあんまり見た事がないので、

簡単な事は言えないと思いますけど……

 

―― 深山さんの色んな活動の根っこにあるのは、人類の平等だとも聞いたんですが、

これはどういう想いなんですか?

 

この日本で人間の平等が成し得るか考えて生き続けたいというか、

自分自身がチャレンジし続けたいというのはいつもあるんです。

夫の例で言うと、会社を創って色んな日本の企業の方々とお仕事をして、

そういう事をしているともう、外国人だからとか差別とかはどんどんなくなっていくんですよね。

例えば日本でも女性だからとか、マイノリティだからとか色々考える方がいらっしゃると思うんですけど、

私の考える事は、日本社会は努力次第で平等という事を目指していける社会なんじゃないかなって思うんです。

だからちょっと何かあっても、諦めないで色々続ける人が増えるのが非常に大事だと思っています。

 

―― ご主人にしても最初は差別的な扱いだったり、

給料とかそのへんでもトラブッたりとかそんな事もあったんですか?

 

ありましたね、給料未払いがあったりとか。

そういうのを会社側に交渉する時に、他の外国の方はどうやっているんだろう、

他の外国の方にもこういう事があるのかもしれない、って思ったんですよね。

だけど語学が達者じゃないから労基署に行けないとか、そういう方が実際にいらっしゃったので。

NPOリンクトゥミャンマーはそういう方々を少しでも助けれればいいかなと思っています。

未来の世代に向けて

―― NPOの活動を始めてから、だいぶ成果は出てきましたか?

 

そうですね。私自身も非常に驚いているのは、

一緒に活動したいという風に言ってくださる若い方々が非常に増えたというのが、本当に嬉しい事ですね。

 

―― それは日本人のボランティア?

 

日本人です。この社会を不平等な社会のままでは嫌だと思っている日本の人が一定数いて、

それを声に出すようになったり活動にするようになってきたというのがあると思います。

二〇一七年にNPO法人を作った時は、外国とのつながりのあった方が

ほそぼそと外国人支援をしているのが日本の多文化共生の現場で、そこまで賛同者がいなかったんです。

でもそれを、もっと積極的に若い方が参加したいというようになってきたというのが、

ここ数年の動きとしてはあるかなと思います。

日本が今後どんどん子供が少なくなって、外国人の方のお力を借りる事は

ここ数十年でほぼ確実に出てくるんですよね。

その時にどういう心構えでやっていけるのかという所で、

できるだけ皆さんが仲良く暮らしていけるような社会になるお手伝いができればいいなと思います。

 

―― 頑張って下さい、ありがとうございました。

放送:2月1日(水) NHKラジオ第一「ラジオ深夜便」
ゲスト:NPO法人理事長 深山沙衣子
きき手:渡邉幹雄
※ 本記事は放送時のインタビューを基に再構成しています。


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